研修報告② >>> 琉球大学へ行ってきました ~精神科~

当院精神科の武村 史先生に、指導医の短期間研修の枠組みで琉球大学 精神科へ研修に行っていただきました。1週間という短い期間でしたが、精神科における地域性の違いなど、研修内容や感想を報告していただきましたのでご紹介します。


[研修先医療機関名]琉球大学医学部附属病院 精神科
[研修期間]平成21年11月30日~平成21年12月04日
[研修内容]○医局および病院案内
[研修内容]○外来診察見学
[研修内容]○他科病棟往診見学
[研修内容]○病棟業務見学
[研修内容]○カンファレンスへの参加
[研修内容]○高度先進医療技術の見学
[研修内容]○秋田大学の紹介
[研修内容]など
[研修内容]※...学生指導や研修医指導を含む

≪感想①≫ ~患者層・地域性が精神面に及ぼす影響について~

初日のみ、タクシーを利用した。タクシーの運転手と、沖縄県も実は自殺率が高い(全国で6位)という話になった。よくよく聞いてみると、沖縄の県民性として、「あまり思い詰めない」「なるようになる、という考えが強い」「生への執着が(内地の人より)弱い」ということであった。秋田県は自殺率ワースト1を更新中だが、「思い詰めて」「人に頼らず」自殺する場合が多いため、自殺を食い止めるアプローチとしても、相談体制を充実させることを第一目標としており、少しずつ効果がみられてきている。沖縄県以外の自殺率上位の県は、主に東北地方および中国地方日本海側であり、経済状況や冬の天候の悪さ、県民性などの点で似た要素が大きく、秋田県と似たアプローチを行っている。沖縄県の場合、精神科内で実際に自殺対策を頑張っておられる先生から話を聞いたところ、秋田県を参考に自殺対策をやってみたが何かが違う印象という話であった。

少子高齢化の日本の中で、沖縄はまだまだ出生率が高い県である。このため、妊娠・出産に関連した患者、児童思春期の患者が非常に多く、この2つに関しては専門外来を設置していた。特に妊娠・出産に関しては、例えば各向精神薬の胎児に及ぼす影響や妊娠週数による違い、授乳の可否に付き、どの医師も詳しい印象であった。

ここ数年で摂食障害が目立って増えているという話であったが、よく聞くといずれも若い症例であった。他県では、一時のブームの後さほど多くはなくなり、時折30歳40歳と長期経過している例が混ざるため、患者層として大いに違う印象であった。これも、まだ出生率が高い水準で維持され、子どもが多い証拠であろう。実際、治療としても、フレッシュな(こじれていない)症例が多いせいか、比較的単純な方法で改善がみられるという話であった。

精神病に罹患した際、内地でもまだ時折、病院より先に「お祓い」に行ったり「霊媒師」にみてもらうケースがある。沖縄ではまだユタ(沖縄のシャーマン)の地位が高く、精神科受診の前にユタの介入のあるケースが、かなり多い印象であった。

季節性うつ病の患者がほとんどいないため、高照度光療法の必要性がなく、その装置にもあまり馴染みがないと言われた。

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↑ 同じ時期の秋田(左)と沖縄(右)


≪感想②≫ ~学生・研修医の指導体制について~

外来の新患の予診と、本診でのベシュライブ(筆記)は、実習に来ている学生に行わせていた(秋田大では、これらは研修医に任せている)。カンファレンスでは外来の新患も全例検討され、その際に症例を紹介するのも学生の役割となっていた。実際、学生の予診のレベルはかなり高く、診断や治療にも大いに興味を持てているようであった。

学生に予診を取らせる代わりに、外来には予診(学生)指導および緊急対応係として、中堅の医師を1人配置していた。また、実習用のマニュアルをファイルとして作成してあり、予診の取り方も丁寧に記載されていた。

003.jpg ←外来医師控室にて
予診を取った学生が、病歴をまとめているところ。オレンジのファイルが実習マニュアル。

学生の時に予診とりを経験しているせいか、研修医は即戦力の扱いであった。指導医が一緒に動くものの、特に他科病棟往診などは、研修医自身に判断させる場面が多かった。

病棟業務はグループ担当制になっており、学生も研修医もグループに配属され、メンバーの1人として扱われていた。総回診の際、学生も担当患者(1人だが)を自分で紹介することになっていた。

カンファレンスは自由な雰囲気で、かなり率直なやり取りがなされていた。外来の新患も全例熱心に検討するため、若手が新患を診ても安心なシステムだと思えた。ただし、カンファレンスの日(水曜)は外来を休診にしており、熱心に行うにはそれなりの体制が必要なのだろうと思わされた。

004.jpg ←カンファレンスの様子
右最前列に座っているのが学生。手前側最前列に研修医が座る。電子カルテを映写して行っている。

≪感想③≫ ~その他~

修整型電気けいれん療法は、手術室で行われていた。(秋田大学では麻酔科外来にて施行しており、医師も着替える必要がなく、楽である。)

高度先進医療とされている近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を見学させていただいた(秋田大学にはない)。診断はもとより、例えばうつ病の回復度合いを数値化するなど、臨床応用について意見を伺うことができた。秋田県では、特に高齢者のうつ病と認知症の初期との鑑別がよく問題になるが、この鑑別でもNIRSが役立つ可能性が考えられた。

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↑ NIRSをデモンストレーションしていただいた。

緩和ケアチームの活動も見学させていただいた。麻酔科医と認定看護師が中心となって意欲的に活動していた。精神科医は5名おり、1人1人の負担が増えないよう、週替わりで対応しているとの話であった。

地理的な理由が大きいのだろうが、「沖縄の患者は自分達で治さねばならない」というプライドを強く感じた(秋田では、場合によっては患者は仙台や東京に行ってしまう)。

≪感想④≫ ~悪かった点~

最初、研修目的の周知が足りなかったようで、自分の立ち位置に少々不安があった。

研修報告書を書くことになっていること、及び、その様式と〆切を、事前に教えていただきたかった。写真は、自分の参考のために撮っただけで、報告書の存在を先に知っていたら、もっと沢山撮っていたと思われる。

006.jpg ←大学近くの居酒屋にて
沖縄料理と泡盛をご馳走になりました。